新たな“砦”、平井淑恵が見せる進化

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白熱した雰囲気の中で行われた第26回早慶ラクロス定期戦。歴史と伝統ある一戦は、9−2という大差で慶大が宿敵を下した。チームの2連覇達成の影の立役者となったのが、DFの平井淑恵だ。「慶應の代表として責任感を持って、勝負から逃げなかったからこそ、勝った時がものすごく嬉しかった」。彼女は今年の早慶戦を一番印象に残る試合だと振り返る。今季こそスタメンとしてチームを底から支えている彼女だが、これまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

昨季のリーグ戦では数度ベンチ入りしたものの、9月頃からは出場機会を得られなくなった。「先輩が勝ち進んでいくごとに自分はチームに不要だと言われている気がした」。メンバーに選ばれないことが続くと、周囲からの評価ばかりを意識してしまい、自分自身と向き合うことができなくなった。「リーグ戦っていう場所は生半可な気持ちで立っちゃいけない」と、厳しさを実感させられたシーズン。そんな時期を彼女は、メンタル的には辛かったけれど、今の自分にとってはなくてはならない時期だったと省みる。

高校までの経験者が多く活躍する中、初心者として入部した平井。中高6年間はバスケ部に所属していたが、より自分にとってチャレンジできる環境を求め、ラクロス部への入部を決めた。1年時は技術の差に不安を感じたこともあったが、先輩の励ましもあり、前進を続けた。また、違うスポーツながらも、バスケ部時代の経験が生かせる場面も多いという。中でも入部時から欠かさず継続しているのが「ラクロスノート」。どんなに小さいことでも自身のプレーについて必ず振り返ることを毎日の習慣としている。バスケノートで成長できる感覚を知っていたからこそ、辛い時期でも己の課題から逃げずに向き合うことができた。

地道な努力は功を奏し、今季はこれまで六大戦、早慶戦とすべての試合に出場。慶應を背負っているという自覚を胸に、ディフェンダーとしてポジションを確立した。まだまだ攻撃につなげる判断力が自身の課題だと語るが、彼女の成長は止まることを知らない。試合ごとに苦手とするプレーにチャレンジし、着実に失敗を成功へとつなげていく。「誇りとプライドを持って、自分のポジションには一番詳しくなりたい」。現状に満足せず貪欲に高みを目指す彼女の存在感は、試合を重ねるごとに増すばかりだ。

いよいよ今年もリーグ戦の開幕を迎える。昨季は関東王者、学生日本一、そして全日本選手権優勝という三冠を成し遂げた慶大。「最強の先輩たちが全身全霊で戦ったからこそ成し遂げられた」。平井にとってはベンチから見ているだけだった歓喜の景色。自身が出場するからには、もう一度日本一を——。謙虚でありながら、勝利への思いは人一倍強い。一皮剥けた彼女の歴史に、新たな輝かしい1ページが刻まれる瞬間まで。いつにも増して熱い夏が、遂に始まる。

 

(慶應スポーツ新聞会 髙橋春乃)

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