関東学生リーグ 〜サッカー親父のラクロス観戦記〜

学生スポーツの醍醐味の1つは、1試合ごとにチームが成長し、数週間後数か月後には全く見違えるようなチームに成長していることだろう。慶應義塾大学女子ラクロス部2018チームもその例外ではない。

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■2018年8月13日:立教大学戦@富士通スタジアム川崎 <慶應4-3立教>

アップするまでは真夏の晴天であったのに、生憎の雷雨で一気に気温が冷え込んだ。結果的に、3時間遅れで試合が始まった。選手は非常にモチベーションを維持するのが難しい状況で2018シーズンは幕を開けた。

立教は自ら初戦の相手として昨年王者慶應との対戦を選んだ。

おそらくリーグ戦が進むにつれてチームが出来上がる前に慶應に一泡吹かせようということか。

立教黄金世代の2年生をレギュラーに多く入れて、ゴール前をガチガチに守りで固め、ロングカウンターで点を取る作戦に出てきた。一方の慶應は昨年の王者の風格もなければ、挑戦者としてのアグレッシブさの微塵も見当たらない。お互いのパスの質と間合いを確認するだけで一向にゴールに向かってシュートを打たない。

短いパス繋ぐだけ。どこかで見た光景。

1998年6月14日。忘れもしない日本サッカー史上初のワールドカップ、日本対アルゼンチン戦。

現地会場で、ゴールに向かわずにただ無為にボール回しをするだけの虚しさ。

ふと遠い過去を思い出しながら観戦していた。

試合前に石川コーチからは、チーム完成度は60%くらいと聞いていた。悪い予感は当たるものだ。いきなり相手に先制点を奪われ0-1。最悪の船出。ここを救ったのは、伊藤香奈(#73)からパスをもらったゴール脇の小久保磨里奈(#97)の値千金シュート。これで2018チームが少し落ち着いた。0-2になっていたら、と思うと空恐ろしい。今でもこのシュートがなかったら今の2018チームの躍進はなかったのではないか、と思う。

その後、一進一退の攻防が続き、3-3の同点に追いつかれた。そこから、左サイドを自ら駆け上がり、そのまま伊藤が決勝ゴールを決める。勝ち負けの分水嶺を知り尽くしている昨年の日本一メンバーとしての意地、執念があった。

しかし、ここから時計が刻む1秒1秒の時間が経つのがあまりに遅く感じた。そう心の中で嫌な胸騒ぎがした瞬間、大きなホイッスルの音。誰かのファールかと思ったら、慶應・大久保コーチによるタイムアウト。残り1分半でのタイムアウト。これは絶妙のタイミングであった。慌て気味のチームを落ち着かせ、残り時間を上手に使かわせて、しっかり勝利をもぎ取った。試合では選手個々のプレーが大事なのは分かるが、この試合に限って言えばこの勝利は明らかに大久保コーチから2018チームへのプレゼントだった。

立教自ら初戦に慶應を選んだことはこの試合を見る限り大当たりであった。ただ、その後のリーグ戦の結果を見ると、この試合の善戦が誤解を生み、他対戦チームにも同じ戦術で行き、青山学院と東農大に足元をすくわれる形で、結局Final4に進めなかったのは不幸である。来年、立教がこの反省をどう活かしてくるのか非常に興味がある。

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■2018年8月25日:法政大学戦@明治学院大学ヘボンフィールド<慶應7-1法政>

初戦とは一転して、真夏の炎天下、他会場でも熱中症指数で取り止めになる試合が出る中、

午後2時過ぎの試合開始で、ぎりぎり指数内で日程通り試合が開催された。

今季初の先制点。そして2点目と追加点。どちらも友岡阿美(#32)から伊藤香奈(#73)へのホットラインで得点する勝ちパターン。2018チームの一つの型出来つつあるかに見えたが、それは蜃気楼に終わった。この直後に、法政に1点を奪われると急に1試合目と同じ弱気のボール回しが始まり、結局2-1という互角の前半戦となってしまった。

後半、吉岡美波(#72)が得意とするカットインシュート。西村沙和子(#33)が確実にフリーシュートを2つ決め、試合を決めた。最終的には、7-1で終わったが、この実力差でこの試合内容では、この後のリーグ戦やFinal4で勝ち上がるのは難しいと言わざるを得ない。目標としている2桁得点を期待したが、個々の能力で得点はしたものの、なかなかチームとして噛み合わない。次の試合が危険…

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■2018年9月1日:青山学院大学戦@駒沢第2球技場<慶應5-3青山学院>

リーグ戦でもっとも危なかった試合だろう。試合前から不穏な雰囲気が漂っていた。

同会場の前の試合、学習院vs成蹊、の試合は、雷の影響で試合時間3分を残したところで80%の試合時間が経過しており、成立試合となり終了。そんなルールがあるのだ。青春の1ページなのだから最後まで試合をやらせてあげれば良いのに、と思った自分が数時間後に全く逆の気持ちでいるとは夢にも思わなかった。

開始早々から、お互いの陣地に攻め込む。見ていて息をのむような攻防。これまでの試合と全く違うスピード感と当たりの強さ。明らかに最初の2試合と違う質の高いゲームに観客も一気に引き込まれていった。そして、先制点は一瞬のスキを突いた青山学院が得点し、0-1に。ここで、荒井理沙(#18)がゴール前のダウンボールを拾って、いきなりの振り向きシュート。

ゴーーール!!

押され気味だった慶應が落ち着きを取り戻し、吉岡美波(#72)のフリーシュートで逆転に成功。前半はお互いに前線からのライドでボールを前に運ばせない互角の戦い。ただ、ライド勝負では1日の長がある慶應に歩があり、4-3で前半終了。

しかし、後半に入ると青山学院は明らかに戦い方を変えてきた。後半、サイドからの長めのFeedで慶應のライド外す作戦。2人飛ばしの縦パス多用。これでサイドに出たボールにディフェンスが釣り出されて、中央が手薄になる展開。慶應はこの対応で劣勢に立ち、アタックも自陣に戻る事態になり、混乱に陥っていた。これで選手が前線にいなくなり、ボールを自陣で奪っても前に運べず相手のライドの網にかかる始末。慶應が得意とするライドからのボール奪取で素早い攻守の切替えが出来ず、防戦一方になっていた。

残り8分で5-3。この時点で雷雨が激しくなり、試合中断。

雨宿りするも一向に天候が回復する兆しが見えず、審判の判断により成立試合で終了。

まさかの2試合連続で試合時間80%以上で終わり。しかし、慶應にとっては、恵みの雷雨となった。残り8分あったら、逆転されていた可能性もあった。審判から試合成立終了を告げられた際に、青山学院の選手が握手をしながら「次は、関東Finalで当たりましょう」という不敵な言葉を残した。明らかに、慶應に勝つ自信がある発言である。

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■2018年9月17日:東京農業大学戦@武蔵大学朝霞グラウンド<慶應12-6東農大>

また悪い癖が出た。

試合開始からポゼッションはできるものの、シュートまで中々持ち込めず、というより持ち込まず、その間にワンチャンスで相手に先制点を譲ってしまった。得点されるパターンは、大体右サイドのディフェンス肩越しに左から打たれる高めシュート。この試合の見せ場は、ディフェンス・リストレから左サイドを駆け上がり、ロングランからそのまま一気にシュートを叩き込んだ野々垣眞希(#81)だろう。慶應は新しい武器を手にしたと共に、スカウティングが当たり前のラクロスで、今後の相手チームは確実に野々垣のランに対策を打ってくるはずだ。もう一つの見せ場は、後半右サイドにリストレ・ライン付近から打った西村沙和子(#33)のロングシュート。常にどこからでもゴールを狙う稀代のゴールゲッターも敵チームのスカウティングを混乱させているに違いない。

後から振り返ってみると、関東リーグで最多失点は、この東農大戦であったことは意外に思えるかもしれない。これまでの、慶應の失点シーンを思い出すと、シュートは、とにかく低めのシュートが多い。そして、今回のような、ディフェンスが影になる肩越しシュートの2パターンに集中している気がする。ラクロスでは、通常スカウティングが上手く出来ても中々その通りにプレー出来るものではない。用意周到に準備して、それを忠実に実行した東農大のAttack陣に称賛を送りたい。

最後に1つ。残り2分。ドローの際に、ボトムに平井淑恵(#75)一人だけ残し、あとは全員Attackポジションに入る、まさかの超攻撃的布陣。驚いた。いつも残り2分で起きる大久保マジックかと思ったら、大久保コーチ曰く、指示が正しく伝わらず結果的に1人ディフェンスになってしまった、とのこと。そんなこともあるのだ。愛嬌愛嬌。

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■2018年9月30日:早稲田大学戦@慶應義塾大学日吉陸上競技場<慶應7-4早稲田>

5月の早慶戦以来4か月ぶりの対戦で、この4か月間のお互いの成長を確認し合う戦いになる。

本来なら宿敵早稲田が死に物狂いで来るはずの試合も、同会場で午前中に行われた、青山学院vs法政、が引き分けに終わり、この時点で青山学院が慶應に続いてFinal4進出を決めていた。したがって、早稲田の4年生は、試合開始前に現役引退が決まってしまった。残念である。

小雨がぱらつく日吉グラウンドで、この試合も先制点は相手チーム・早稲田。マンダウンで一人欠いている時間にフリーシュートで難なく1点を奪われた。その後、2点を奪い返し、終わってみればいつもの前半2-1.エンジンが掛かるのが遅い、と言えば遅く、どんな状況でも逆転できる勝負強さを兼ね備えている、と言えばそうとも言える。

後半、早慶戦に滅法強い伊藤香奈(#73)の連続得点で既にハットトリック。一気に4-1まで突き放すものの、その後再び早稲田に4-3に迫られる。そんな中、日野美咲(#59)のサイドからのシュートが決まり、一気に盛り上がり、〆は2試合連続の西村沙和子(#33)のロングシュート。これで試合終了。小雨がぱらつく日吉で、見事にリーグ戦5連勝でAブロック1位通過を果たした。

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◇2018年10月7日-15日:アメリカ遠征@Boston&New York

毎年恒例となっているアメリカ遠征は、大久保コーチに仕込まれた巧妙な強化日程である。おそらく、この時期より前でもこの時期より後でも、チームとしての成長効果が薄くなるのだろう。昨年もこのアメリカ遠征を経て、見違えるような2017チームに成長したのを記憶している。2018チームもまだまだ未完成。ここでの大きな飛躍を期待していた。

アメリカ遠征に同行したわけではないが、(キャプテン阿美のご両親は一部同行!!スゴイ。恐るべし友岡家(笑))、話を聞いている限りでは、大きな選手・グラボの速さ・迷いのないシュート、など、どれも刺激的であっただろう。リーグ戦5試合で欠けていたパズルのピースを一つ一つ拾うように、チームは熟していった。

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■2018年10月27日:関東地区準決勝 東海大学戦@駒沢第1球技場<慶應9-2東海>

快勝!

これ程気持ちの良い勝ち方は望めないだろう。今の4年生にとって、東海大学は天敵である。

高校時代のJapanメンバーが日本一を取るために入学した東海大学。今の4年生が1年生の時、①サマー、②ウィンター、③あすなろ、全ての新人戦を勝ち切れず、東海大学は3冠王。

先輩たちと一緒に戦った2年生のリーグ戦は引き分け。慶應が日本一に輝いた3年生の時でさえ、東海大学には引き分け。東海大学から見たら、今の慶應には負けていない強烈な自負心がある。

その出鼻を見事に挫く。リーグ戦の先制点は5試合中4試合が相手チーム。リーグ戦5連勝といってもすっきりしなかったのはこの理由かもしれない。しかし難敵東海大学に対して、見事な集中力とボールへの寄せの速さと強さで東海大を圧倒する。いつも惚れ惚れする清水珠理(#58)のインターセプトからの逆襲。一気の攻めで得たフリーシュートを西村沙和子(#33)が落ち着いて決める。久しぶりの先制点に、ベンチも慶應観客席も一気にヒートアップ。

この試合で、1つ気付いたことがある。これまでショートパスを繰り返すことが多かった慶應が、ランを使うようになったことである。具体的には、ボールを持つとパスをせずに内側前方に切り込み、これによりサイドのスペースが空き、そのスペースにチームメイトが入り、パスが繋がる繋がる。時には、その空いたサイドのスペースにそのまま走り込む。ランの距離が僅か数メートルの走りでも、相手チームの体重が自陣向きになり、走りが自陣向きに変わるため、仮にボールを奪われても、相手チームがスムーズに速攻へ移行出来ない。そして、得意のライドで相手の攻めを遅らせ、中盤の攻防で慶應のインターが非常に多くなった。

普段は華麗な攻めに目が奪われがちだが、この試合を冷静に総括すると、間違いなくドローと ディフェンスの勝利と言える。

まず、ドロー。大学トッププレーヤーの東海大学抜井(#1)はドローに絶対的な自信を持っている。石田百伽(#51)と小久保磨里奈(#97)が代わる代わるドロワーとして入り、相手の癖を研究し尽して弾くボールの先には、いつも慶應の仲間が待っている。面白いくらいに取れる。ドローはほぼ取れないと思っていたのに互角以上の獲得率となり、これは流れを慶應に大きく引き込む要因となった。

次に、ディフェンス。ここでも相手キーマンの抜井をどう封じるか、は最大の課題であった。櫨本美咲(#62)はシャカの利き腕である左にボールを持たせ、センタライン付近左サイドから中央にステップを踏んでくる相手に対して、右から圧力掛けて斜めに押し出し、ゴール前に入らせずにゴール右サイドに流れさせる守りを何度も繰り返した。シュートレンジに入らせない見事なディフェンスだ。

また、東海大は執拗に低めのシュートを打ってきていたが、アメリカ遠征で覚醒したのか、大沢かおり(#28)は完璧なまでにローボールを抑えていた。ディフェンス陣にシュートコースを消すサイドを指示して、自分の間合いで守る大沢は本当の守護神である。前日のTwitter予想では6-8で東海大学の勝利。特にリーグ戦の東海大の得点力が慶應のディフェンスを上回るという戦前予想。結果は、8点どころか、2点。特に前半は無失点に抑える完璧な試合運びであった。

そして、影の立役者は、スカウティングの藤澤陽子(#36)だろう。ドロー・ディフェンス・中盤の戦い方、どれをとっても緻密なスカウティングであった。そして、それを忠実に実行できるトップチームが織り成す珠玉のゲーム。

もう一つ忘れてはならないシーンがあった。慶應の3点目は、今季初得点の橋本ひかる(#77)。

妹・なつみちゃんは東海大ラクロス部の1年生プレーヤー。東海大Topチームは「お姉ちゃんを一緒に倒そう!」の合言葉で相手は士気を上げていた。そんな中、小久保がドローを

そのまま取り、素早くパスをつないでゴール前の橋本に。いつもの橋本ならここで、サイドにボールを散らすが、この日はゴールに向かって、少し遠めから強引にシュート。決まった!

慶應女子高校Crushersのキャプテン。挫折のない人生の中で、Topチームで試合に出れない初めて挫折を味わったと吐露した昨年の祝勝会。万感の思いの詰まる乾坤一擲のシュートであった。

この試合には昨年の日本一メンバーだけでなく大勢のOGが駆け付けた。社会人になり多忙を極め、多くのOGが応援できるのはどうしても駒沢球技場の試合になる。前回の青山学院戦@駒沢が不甲斐なかった試合から、成長著しい2018チームの見違えるような試合運びを見て、OGの皆さんも驚きと喜びが入り混じっていた。過去2年引き分け、日本一2017チームの唯一の心残りを、後輩たちが見事に晴らしたのだった。

朝方は雨が降っていた駒沢競技場に、試合後は木漏れ日が差し込む、見事な秋晴れとなっていた。

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■2018年11月10日:関東地区決勝 青山学院大学戦@駒沢第2球技場<慶應5-4青山>

宿敵、東海大に勝利した安堵感。リーグ戦で勝利した相手。慶應が大勝した法政に引き分けた青山学院。どれを並べても、気の緩みが出る条件しかない。しかし、思い返すとリーグ戦の第3戦で勝利した内容は誇れるものではなかったし、50分間フルに戦った訳でもない。にもかかわらず、人の記憶というものは自分に都合のよい部分だけが残るものである。

試合開始。ドローボールを奪い右サイドに流れた清水珠理(#58)のクロスを相手の主将大矢(#7)が思いっきり叩いた。清水の手からクロスが落ちる。荒れる試合の予兆があった。しかし、リスタートから慶應が一気にゴール前に運び、友岡阿美(#32)から石田百伽(#51)へ。ゴールを背にして囲まれながら振り向きざまに石田のシュートが決まる。大きなガッツポーズ。幸先の良い1-0の好発進。相手は、前回同様に前線からのライドでプレッシャーをかけてくる。慶應も負けじとライドで対抗。ただ前回と違うのは、お互いにキャッチミスの連続。技術的なミスというよりは、緊張からなのだろうか。それとも、青山が巧みに仕掛けた慶應の選手がスピードに乗る前にボールを叩き落とし、グラボ勝負に持ち込む泥試合の作戦か。いずれにしても、これが決勝であり、どちらかのチームは引退試合となる弱肉強食の世界。物凄いプレッシャーが選手個々人に襲い掛かる。一進一退の攻防の中、再び友岡から清水へ。ゴールサイドからカットインしてシュートが決まり、2-0。今日の友岡は体がキレキレで、これまでの試合から一段ギアアップした俊敏な動きでキャプテンとしてチームを引っ張っていた。内容はあまり良くないが、先制点を奪い、結果を出せるチームへの変身はアメリカ遠征の賜物なのか。

そう思っている矢先に、急にあの悪い癖が出てきた。相手の執拗なライドと叩き落す作戦に、消極的になり、足が止まり走らずに短いパスでボールを回し始めた。いきなり相手のゴールが決まり、楽観ムードが消えていった。観客席も息をのむ。1点取り落ち着きを取り戻した青山が勢いに乗り、シュートの嵐を浴びせるも何度となく大沢かおり(#28)がセーブをして防いだ。スーパーセーブでなく、普通のセーブに見えるところがスーパーだなぁと感心した。これだけのシュートを浴びても弱気にならず、ゴール脇でのインターセプト、時にリストレラインにまで持ち上がりチームを鼓舞する。

どこかで見たプレーヤーと重なる。そうだ!サッカードイツ代表のキャプテン・ノイヤーだ。この選手を初めて見た時の衝撃は忘れられない。守るだけでなくボール回しに入る11人目のフィールドプレーヤー。自分がセンターサークル付近まで上がることで、ディフェンスを1人減らし、攻めを1人厚くすることで、得点力は飛躍的に上がり、攻めは最大の防御となる。リスクを取って、最後尾からゲームメイクする視野の広さ。大沢がノイヤーに重なって見えてきた(笑)。

何故この選手が昨年横田真央(18卒ゴーリー)さんに後塵を拝していたのか理解できない。強いて理由を上げれば、技術の問題ではなく、メンタリティなのだろう。今シーズンは、毎回試合後皆に笑顔で皆に声をかける余裕。特に試合中上手くいかなかった選手や目立たなかったが良いプレーした選手に声をかけているシーンを見ると、この試合のゲームキャプテンになるのも納得できる。そして、石川ゴーリーコーチがこの選手を4年間大事に育ててきたのがよく分かる。おそらく昨年のレギュラー争いも、この2018チームのためだったのだろう。

しかし、試合は思うように運ばない。同点に追いつかれ、マンダウンの状態で前半終了。後半早々に2-3と逆転を許す。頭の中で、2-4になったら、この試合は慶應が落とすだろう、とよぎる。ここで、勝負師の伊藤香奈(#73)がフリーシュートを確実に決めて3-3に戻す。この1点は、リーグ初戦の小久保磨里奈(#97)の1点目と同じく値千金であった。そして、慶應のもう一つのホットライン、西村沙和子(#33)から吉岡美波(#72)へのパス、そしてカットインからのシュートにより4-3と再逆転。青山学院も史上初の決勝戦に大勢の応援者が駆けつけ、選手たち自身が関東で優勝して歴史に名を刻む覚悟が出来ていた。素晴らしいメンタリティがチームに漲っていた。ついに4-4となり、残り時間は7分。再び、攻守の切り替えが速い展開に観客席も息を飲む状態で迎えた終盤戦。

ここで、コーチの対決が見られた。右サイドをロングランで駆け上がった 石川のどか(#66)が相手リストレのコーナーサイドに行った時に、ホイッスル。大久保コーチが勝負をかけるタイムアウトを取る。ここは経験に裏打ちされたアクション。ある程度、時間を使って相手にシュートを打たせる時間を無くしてからシュートを打つのかと思ったが、相手の気迫が勝っていた。シュートを打つ前に相手ボールになり、同じサイドのセンターラインを越えたところで、今度は青山学院のコーチ柴田陽子さんがタイムアウト。彼女は、対戦している慶應大学2009年卒の大久保コーチの教え子。優秀な後輩は、すぐに先輩の良いところを真似るものだ。残り1分。この時点で、慶應の勝ちはなくなり、青山が勝つか、サドン・ビクトリーに行くかの選択肢に絞られた。私の心の中で、こんな所で負ける慶應2018チームを見たくない、という強烈な思いが込み上げてきた。結果的に、この1年間練習してきた全員守備の気持ちがしっかりプレーに出て、相手へのプレッシャーをチームとして掛け続けて50分間終了の笛が鳴り響いた。

昨年、社会人Neoとの決勝も、前半1-5から、6-6と追いついて戦ったサドン・ビクトリー。その試合以来のサドン・ビクトリーだ。チームが輪になる。真剣にコーチの話を聞く青山学院に対して、大久保コーチは輪に入らず、選手たちは何やら普通の女子会のような雰囲気で笑顔が絶えない。対象的な対応。これが吉と出るか、凶と出るか。すると、タイムアップ直前に、何か思い付いたように、大久保コーチが輪に入り簡単に指示をしている。笑っていた選手たちの顔が一瞬引き締まる。その瞬間に笛が鳴り、サドン・ビクトリーに突入。大久保コーチが何を話したか、私は知らない。ただ、スタンドから見ていて、数分間ずっと緊張して入るより、最後の一瞬で戦闘モードに変えた手腕は百戦錬磨のコーチの証である。

運命のドロー。慶應がマイボールとしたが、シュートを打つ前にダウンボールにされ、相手ボールになる。この時、前掛かりになった青山の選手に後ろからダウンボールにしてグラボを奪ったのは、両足にテーピングを巻いて、サドン・ビクトリーから再び戻ってきた清水珠理(#58)である。本当にこの選手は渋い。玄人好みである。そして、満身創痍でもフィールドに戻した大久保コーチの気持ちが良く分かる。このターンオーバーから、西村がゴール右脇で待ち構える吉岡へパス。10年間、ラクロスをやってきて練習に練習を重ねて得た絶対的自信のある右からのカットインで、左上へのシュート。見事に決まった!ラクロスの神様が努力の賜物として吉岡に降臨。連続得点により、新たなヒロインが生まれた。

和やかな雰囲気で行われた勝利者インタビュー。チームメイト全員が傍に座り、インタビュー中に茶々を入れる。吉岡が皆に愛され、チームが一丸となっていることが良く分かるシーンであった。全国にラクロス18000チームある内、6000チームが所属する関東。その大学リーグにおいて2年連続で頂点に立った2018慶應女子ラクロス部。関東リーグ優勝おめでとう!

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見事に関東を勝ち上がり、ここから全国大会が始まる。この2018チームで再び栄光の日本一を勝ち取るまであと1か月。「強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いんだ!」という大久保コーチの言葉に応えるように、慶應女子ラクロス部2018チームは8月リーグ戦初戦から11月の関東リーグ決勝にかけて、1試合1試合の勝利を重ね、7連勝負けなし。この4か月間でこのチームは間違いなく大きな成長を遂げた。

そして更なる成長を心より願って、サッカー親父はスタジアムで彼女達を温かく見守っていたい。

櫨本 修(記)=櫨本美咲(#62)父

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※注釈

​本文は、観戦した時の記憶に頼って11月中旬に一気に書き下ろしたものであり、   一度も録画ビデオを見ていないため、事実に反する表記や誤認がありましたらご容赦頂きたい。

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