ゴーリーズの代表として持つ責任感。大沢かおりが進む不動の守護神への道

慶應のスタンドを試合中見てみるとこんな応援がある。「守護神 〇〇」。ディフェンスのシーンで行われるこの応援はDF陣の最後の砦であるGを鼓舞するものだ。昨季は4年の不動の守護神・横田真央が主にGを務めていたため「守護神 ぞねす」とコールされることが多かった。そして今季。Gのスタメンの座を掴み「守護神 けい」とコールを受けるのが大沢かおりだ。

昨季はGの2番手としてベンチから試合を見ていた大沢。途中出場で試合に出ることが多かった彼女だったが、そこには自分の活躍よりもチームの勝利を望む姿があった。「たとえ自分がセーブできなくても、チームが勝てばいい」。こうした自己犠牲の精神を持つことができたのにはあるきっかけがあった。

11月に行われた関東FINAL4の立大戦。勝たなければ次のステージに進むことができないこの試合。大沢の出場時間は勝負の決まった試合終了間際の20秒ほどだった。「それだけだけしか出場時間がないなら出たくなかった。本当に悔しくてずっと泣いていた」。その姿を見た石川コーチにこう言われたという。「お前は何も見えていない。それが弱いところ」。

本当に試合に出たくても出られない選手。怪我をしていてスタンドで見守る選手。4年でもメンバーには入れず悔しい思いをする選手。そういう思いをする選手が大半の中で試合に出ているということを理解しきれていなかった。自分の活躍ばかりに目がいってしまい視野の狭さを痛感させられた。自分が出場してチームに貢献したい気持ちはあるが、それだけでは本当に苦しくなった時に乗り越えることはできない。応援してくれる全ての人のために試合に出場するということを感じることができた。

4年になりスタメンとしてGの座につく大沢だったが、その自己評価は厳しく「思うようにできていない現状」と話す。「取れなきゃいけないシュートが全然セーブできなくて。自分の技術と理想が追いついていない。開き直れていない」。スタメンとして出場している以上、「止めなきゃ」と強く思ってしまいプレーが固くなってしまう。そこには他のGの分まで頑張らなければならないと強い責任感を感じるあまりに、理想のプレーができていない現状に悔しさを感じていた。

大沢の理想はやはり不動の守護神。昨年ずっと見てきた横田が格好のお手本だった。「ぞねすさんのプレーを見ていてナイスセーブだと思いながらもどこか悔しくてそれが原動力だった。ぞねすさんが私にさせた健全な悔しがらせ方をできる先輩になりたい」。スタメンの調子が良い時と悪い時では出場していない選手の感じる悔しさの種類が違ってくる。もしスタメンの調子が悪いのに出場ができなければ、私の方がやれるのにどうして試合に出られないのかいう技術以外の部分でも迷いが出てしまう。それではチーム内にも良い競争は起こらない。最高学年としてチームを勝利に導くことはもちろん、競争心を掻き立てることへの責任感も感じていた。

大沢がこれまで感じてきた悔しがり方は自分を大きく成長させてくれたという。そしてその姿を自分が後輩に見せる番がきた。大沢が不動の守護神となった時、慶應のゴーリーズに新しい競争が生まれることは間違いない。

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