可能性を信じて。今季、小久保磨里奈が爆発する。

MF――フィールドの中央に構え、攻守の両方に関わりながらボールを繋ぐポジションだ。幅広い視野と素早い判断能力が必要とされ、ゲームメイクの中枢を担うと言っても過言ではない。そんな慶應MF陣の一人に、今年でラストイヤーを迎える小久保磨里奈がいる。

思えば彼女はいつも、“繋ぎ目”だった。バスケ、サッカー、そしてラクロス。経験してきたスポーツではいずれも、運びのポジションについた。「自分はすごく目立ったプレーヤーではない。どれだけ安定したプレーヤーになれるか、それが自分の目標でもある」。自らのプレースタイルついて小久保はこう話す。アップダウンの少ない信頼のおけるプレー、それこそが彼女のラクロスであり、スポーツ選手として歩む道であった。

小久保の安定感はどこからくるのか。それは彼女の持つ、並み外れた“探求心”にあった。下級生の頃は上から与えられた練習をひたすらにこなしていた小久保。リーグ戦という舞台も、どこか自分とは遠いものに感じていたという。しかし、上級生になり主体的に考え、それを与える立場になると、ラクロスに対する姿勢が変わった。「もっとラクロスを追求していきたい」、飽くなき探求心の始まりだった。

それを顕著に表すものの一つが、彼女のドローだ。今季、小久保はメインのドロワーを任されている。最初はただの好奇心からドローの練習に参加していたが、「上げるたびに新しい発見がある」と、次第にその奥深さに惹かれていった。「もっと技術を身に着けて、チームに貢献したい」、そのための努力も怠らない。彼女に言わせれば、努力してできないことはないのだという。強い探求心と努力、それこそが小久保の持つ安定の礎となっているのだ。

18シーズンの初め、彼女は今年に向けてある決意を口にした。それは「爆発する」こと。自らが得点力として貢献する意も含まれていた。これまでDF寄りでの活躍が多かった小久保からは、少し意外な言葉だった。偉大な上級生に頼ってしまったと振り返る昨シーズン、自らに残した消化不良がラストイヤーへ臨む彼女を奮起させたのだった。「自分ができることを後悔なく出しきりたい」。“爆発”とはすなわち、自身の限界への挑戦だった。

今季、小久保は言葉通りの爆発を起こしている。リーグ開幕戦の立大戦では前線に躍り出て、チームの開幕弾を放った。さらに、青学大戦ではここぞのフリーシュートを決めきり、得点力としての成長を見せつけた。しかし、当の本人はこの現状に満足していない。「もっと得点できるし、まだまだできる」。小久保は自分の限界を決めつけず、目の前の課題に向き合い、鍛錬し続ける。

自分の可能性を“繋ぎ目”に終わらせない、これこそが探求の末に導き出した彼女なりのラクロスの答えなのだろう。リーグも4戦を終え、この先に待つは厳しい戦いばかり。これまで以上に得点の重みが増すなかで、小久保の挑戦はどこまで高みを目指せるか。“大爆発”へのカウントダウンは、もう始まっている。(慶応スポーツ新聞会 堀口綾乃)

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